(早朝。城戸邸外観。)

(外から瞬の部屋の辺り。高い木の枝に小鳥たちがさえ
ずっている。)
チチチ…

(部屋の内側から、窓辺。白いカーテンの隙間から差して
くる朝の光。)

(瞬の部屋の描写数コマ。籐製またはオーク材の家具、)

(テーブルの上の花瓶、至る所に小さな観葉植物。)

(本棚に小さなうさぎのぬいぐるみ。キャンディーの入った
ガラスの小瓶など。)

チチチ…
瞬 「ん…」
(目覚める。ベッドの周りの割と広い範囲の絵で。)

(瞬だけアップ。)
瞬 「変な夢…」

(ベッドから出る。パジャマ姿。)
瞬 ―――でも、

   ―――前に比べたら……ね
(絵はハーデスの剣に刺し貫かれた星矢を中心に、イオ、
アフロディーテなど人の死んでいくシーンの数々。)

(瞬、カーテンをバッと開けて、)

(窓の外へ身を乗り出すようにして空を見上げる。)

(清々しく晴れた空。)

(陽射しに目を細める瞬。)
瞬 ―――あれから、もうすぐ二年か…

   ―――長い長い戦いの日々が終わって、

   ―――星矢はギリシア
       氷河は東シベリア
       紫龍は五老峰へ帰っていった
   ――― 一輝にいさんはまた行方知れず
   ―――他のみんなもそれぞれ…

   ―――ここに残ったのは僕と
(庭。駆けて来るTシャツ姿の瞬。)

瞬 「おはよう、邪武」

邪武 「おう」
瞬 ―――彼の二人だけ (絵は邪武のみ。)

瞬 ―――今は…
邪武 「ゆうべはちゃんと眠れたか?」
瞬 「うん。大丈夫。夢は見たけど」

(庭の途中の白樺並木の道を走っていく二人。)
瞬 ―――これで良かったんだと思う

   ―――ここに居なかったら、
       彼がいてくれなかったら、
       僕はまだ泣いていたのかも知れない

   ―――二年前と何も変わらない気持ちで
(回想。夕暮れ時の庭の一角。大きな木の根元に膝を抱
えて座り込んでいる瞬、)

(完全に顔を伏せている。)

(フッとタンポポの綿毛を吹き飛ばす邪武の口元のアップ。)

(瞬、顔を上げてそっちを見る。)

(瞬の目線で、黒い編み上げブーツの足のアップ。)

(すぐ傍までやって来て立っている邪武。)

瞬 「…邪武」

邪武 「なんだよ、
     まーた泣いてるのか、オマエ」

(瞬無言で顔を逸らす。)

邪武 「そんな事なら、どうして
     一輝と一緒に行っちまわなかった
     んだよ?」

瞬 「だって…それは、ちがうから」
   「ちがうから…」

邪武 「…ったく、妙なとこで強情なんだよなァ」

    「それなら、いい加減、始めたらどうだ?」
    「なっ?」
    「オレに出来る事があれば手伝うぜ?」

瞬 「……ダメだよ」

(邪武1コマ。)

瞬 「ダメなんだ…始められない」
   「始められないんだよ…」

(夕暮れの空に台詞のみ。)
瞬 「僕だって始めたい、でもダメなんだ」

(立ちあがってワッと泣き出す。)
瞬 「何にも始められないんだよ!!」
   「どうしてわかってくれないの!?」

(邪武1コマ。)

(強い風が吹きぬけて、その辺りのタンポポの綿毛がみん
な飛ばされる。)

(大きく見開かれた瞬の両目。)

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