(邪武が両腕で瞬を抱きしめている。顔は無表情で、自分
でもその行為にどういう意味があるのかは何も考えてい
ない感じ。)

(木洩れ日が二人の上から射している。)

瞬 「…僕、だんだんわかってきた気がする」
   「今まではいつも必死で
    ゆっくり考えられなかったけど、
    ここで普通に暮らせるようになって、
    ようやく自分の答えが。」

   「誰にも出来はしないんだ」
   「例え、地上を守ることは出来ても、
    人間を救うことは
    誰にも出来はしないんだ」
   「本当に救うことなんて、出来ないんだ」

   「僕らがやってきた事は、結局歴史を繰り返しただけ、
    聖戦と銘打ったただの殺し合いだった」
   「誰も幸福になんかならなかった」
   「子供の頃に思い描いた世界はただの幻想だった」

邪武 「…あした、朝の六時にここへ来な」

瞬 「エッ??」

邪武 「とにかく、何か始めるんだ」
    「…とりあえず、ジタバタ走り回ってみる」
    「オレのとっときのコースを教えてやろう」


サーン (砂浜に打ち寄せる波。)

(海辺で立ち止まっている瞬。)
瞬 ―――朝のロードワークは
       すっかり日課になってしまい

(広い空と水平線。)

(キラキラと日光を反射させている海。)

邪武 (ずっと先を歩きながら後ろ向きになって呼ぶ。)
    「しゅーん!」
    「なにやってんだー?」

(しゃがみ込んで小さな貝を拾っている瞬、)

(明るい表情で顔を上げて、)

(追いつこうと走っていく。)

(立ち止まって瞬を待っている邪武。やわらかに微笑みか
けてくれている。服装以外、夢の最後と全く同じ。)

(瞬、さっき拾った物を邪武に見せている。二人共、無邪
気な笑顔。)
瞬 ―――確かに、何かが始まった気がする

(青空に台詞のみ。)
瞬 ―――これが一体何なのかは、
        まだよくわからないけれど

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