(防波堤に腰を下ろして海を眺めている二人。)
邪武 「…そうか。じゃあ、お前はもうずっと
日本にいるんだな」
瞬 「うん、そのつもり」
「ここで何をしたいのかはまだわからないけど」
「君はどうして……」
邪武 「ん?」
(瞬、突然何かにひどく怯えた表情になる。)
瞬 「…あ、あの、ええと…、その、」
「ど、どうして…いつもしてるの? それ…」
(全然別の事を訊ねる。邪武の手の黒いレザーグローブを
指差して。)
邪武 「え? ああ、これか…?」
「これは…そうだな、気休め…かな」
瞬 「気休め?」
邪武 「さてと、そろそろ帰るか」
(立ちあがる。)
瞬 「うん…」
(海沿いの道を走って帰っていく。)
(瞬1コマ。表情があまり楽しそうではなくなっている。)
(城戸邸の正門の前。)
邪武 「じゃな、オレ、一寸こっちに用があるから」
瞬 「うん」
(別れる。)
(城戸邸の敷地内。沙織が車で出かけようとしている。)
瞬 「あ、沙織さん…」
「おはようございます」
沙織 「あら、おはよう瞬」
瞬 「今朝はもうおでかけなんですか?」
沙織 「そうなの。そういえば、瞬、今日だったわよね?
孤児院へ行く日は」
瞬 「ええ…」
沙織 「例の件、よろしくお願いね」
辰巳 「お嬢様、お急ぎ下さい」
瞬 「行ってらっしゃい…」
(沙織は後部座席に乗り、ドアを閉める辰巳。)
バタン (辰巳は助手席に乗り、)
ブロロロロ… (車が走り去っていく。)
(見送る瞬。)
(瞬のアップ。更に暗いカオになっている。)
(星の子学園。)
(屋外で遊んでいた子供たちが一斉に。)
子供 「あっ、しゅんちゃんだぁ」
〃 「しゅーんちゃーん!」
(子供らに取り囲まれる瞬と邪武。)
(青空。)
(外で子供たちとサッカーボールで遊んでいる邪武。)
(その様子を窓の傍に座って部屋の中から眺めている、
美穂と瞬。)
美穂 (邪武のことをちょっと指差して、瞬に。)
「…好きなのね」
瞬 「へっ?!」 (ギョッとして美穂の方を向く。)
美穂 「子供…」
瞬 「あ、ああ…」
「そうだね、もう完全に同化しちゃってるよね、」
「あはははは」
「だけど、なんで僕はいつも”しゅんちゃん”で」
「邪武は”おにいちゃん”なんだろうね?」
美穂 「クスクス…」「いいじゃない、別に」
瞬 「せめて”しゅんくん”と呼んで欲しいよ」
(再び邪武の方を見ながら小声でブツブツ言っている。)
(美穂1コマ。瞬を見続けている。)
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