(午後の城戸邸。)
(窓辺に立って外を見ている沙織と、ソファに腰掛けて俯
いている邪武。)
沙織 「一体、どうなっているの?」
「瞬はあれから自室に閉じ篭ったきり
一歩も外に出て来ないそうね」
「本当は喧嘩でもしたんでしょう?
あなたたち…」
邪武 「…わかりません」
「わからないんです、本当に」
「あいつ、何が気に入らなかったのか…
オレが何をしたのか…
これからどうしたらいいのか…」
沙織 「ちゃんと話し合えばわかってくれるわよ瞬なら」
邪武 (イライラして。)
「だから、してませんてば喧嘩なんて!」
(沙織1コマ。一寸驚く。)
邪武 「す、すみません…」
「本当にわからないんです」
「あいつ、もうすっかり立ち直ってくれたと
思ってたのにな…」
「あんなに笑ってたのに」
沙織 「だけど、それなら尚更
放っておく訳にはいかないでしょう」
邪武 「…所詮、無理だったんですオレには」
「誰かの力になろうだなんて」
沙織 「それは本気?」「では投げ出すというの?」
「あなたらしくないわね邪武」
邪武 「フッ、何故です?」
「しごくオレらしいじゃありませんか」
(沙織1コマ。)
パシャン (画面いっぱい、飛びかかってくる花瓶の水と飛
び散る花。)
(部屋全景。沙織の手に花瓶。)
(無言、厳しい表情で邪武を見つめる沙織。)
(花瓶の水を頭からあびせかけられた邪武。呆然としてい
る。)
邪武 「……し、失礼…します」
(フラッと立ちあがって、)
(部屋を出て行く。)
(その姿を見つめ続ける沙織。)
(廊下をとぼとぼと歩いていく邪武。)
(邪武、アップで。肩の辺りまで濡れている。)
邪武 ―――オレだって、笑っていて欲しい
あいつに笑っていて欲しい
―――はじめはただ貴女に頼まれたから
瞬に関ってた
―――だけど、今は…
(瞬の部屋。ベッドの上や床に散乱している洋服などの荷
物。)
(荷造りしている瞬。)
(自分の部屋に帰るため廊下を歩いている邪武。)
パリーン (ガラスの割れる音。ハッとして顔を上げる邪武。)
邪武 「瞬…!?」 (駆け出す。)
(瞬の部屋。フローリングの床の上で、小瓶が砕け散って
しまっている。)
瞬 「あ…ああ…」
邪武 (ドアの前まで来る。)
「瞬っ!?」
「おい瞬、何だ今のは!?」
「瞬!!」
ガチャッガチャッ (ドアを開けようとするが鍵がかかって
いて開かない。)
(瞬、呆然と床の上の破片を見つめている。)
ガガガガガガ (ドアノブを無理矢理一方方向に回し続け
る邪武の手。)
ガキッ (鍵が壊れてドアが開く。)
邪武 「瞬…!」
(部屋の中に踏み込む。)
(邪武、大きく1コマ。真正面向きのアップ。髪から水の雫
が落ちる。)
(瞬は顔を上げない。無反応。)
邪武 「し、瞬…」
(荷造り途中の部屋の中。)
邪武 「な、なんだよ…これ!?」
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