(邪武、告白を真顔で受け止める。これまでの瞬の態度に
ついて、何もかも納得する。)

瞬 「嫌いになんてならないで」
   ―――ごめんね、君だって
       泣きたかったんだよね
   ―――それなのに…

   「もう自分を責めないで」
   「僕は知ってる」
   「君の強さは、別のところにあるの」

邪武 「瞬…」

(再び鍵盤の上にかざされる邪武の両手。)

瞬 ―――教えて、君は誰?
邪武 ―――オレは…、ユニコーン
(邪武、同じ曲を弾き始める。)

(瞬、両目を閉じる。)
瞬 ―――ユニコーンはどうしてここにいるの?
       何を伝えたかったの?
   ―――人殺しがしたかったの?
       そうじゃないでしょう?

   ―――それを教えて
       この僕に

(力尽きて荒野にうずくまっている、傷だらけで角の折れ
た一角獣。)

(ゆっくりと立ち上がろうとする。傷付いた脚がガクガクとぐ
らつく。)

(立ち上がれず、地面に倒れ込む一角獣。)

(ピアノを弾く邪武。)

(目を閉じて聞いている瞬。)

(もう一度、立ち上がろうとする一角獣。)

(空を覆う雲の切れ間から、一条の光。)

(一角獣のアップ1コマ。)

(ぐらつく一角獣の脚。)

(立ち上がれず、また地面に倒れる。)

(ピアノを弾く邪武。)

(必死で立ち上がろうとする一角獣。)

(遂に立ち上がり、)

(後足だけで立って大きく伸びあがり、嘶く。)

(画面いっぱいに、閃光。)

(生まれ変わったかの様に、優美な姿と新しい角を取り戻
した一角獣。)

(荒野を駆けていく。)

(遠くに小さく人影が見える。)

(膝を抱えて座り込んでいる少年。序章の瞬。)

(ユニコーン、その人影の方に向かって真っ直ぐに駆けて
いく。)

(少年がユニコーンに気付く。)

(固い大地を蹴って走っていく蹄。)

(最後の音を弾き終えた邪武の手。)

(音が止んだ部屋の中。)

(まだ集中したままの邪武。)

(目を閉じたままの瞬。)

(邪武、我に返る。)

邪武 「…しゅ、瞬」

(瞬、ゆっくりと夢から目覚めるように目を開く。)

(瞬の片方の目から大粒の涙が一滴こぼれて頬を伝う。)
邪武 「瞬」

瞬 (泣きながら、笑顔で)
   「見えたよ、君の姿」
   「この方がずっといい」

邪武 ―――瞬…

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