瞬 「…そうだ、僕、もう行かなきゃ」
(立って歩き出す。)

(振り返り、笑顔で。)
瞬 「いろいろありがとう…」
   「それから、困らせてごめんね」

邪武 「瞬…」

(瞬、部屋を出ていこうとする。)

邪武 「瞬!!」
(瞬の片腕をとらえて引き留める。)

瞬 (仕方なく立ち止まるが、振り返らずに。)
   「知ってる…」
   「君が誰を好きなのかってことくらい…」

   「もう、ここには居られないの」

   「君の想いが叶うといいね…って、
   嘘でも言ってあげられないから」
   「それは僕には痛過ぎるから」

(瞬、軽々と邪武の手を振り払い、)

(歩いていく。)

邪武 「…ち、ちがうんだ」
    「そうじゃないんだ」
    「沙織お嬢様は、もう関係無いんだ!」

(瞬、思わずピタッと止まってしまう。)

邪武 「ただ…、応えるわけにはいかないんだよ」
    「それが例え誰であっても、絶対に」
    ―――自分自身さえ、愛しても信じても
         いない奴は…

瞬 「邪武…」

邪武 「だけど、もしも…」
    「もしもいつかオレがオレのことを許せたら」
    「自分を好きになるなんてことができたら」

    「そしたら、その時はオレ、
     いの一番にお前に知らせに行くよ」
    「真っ直ぐにお前のところへ行くよ」

(瞬1コマ。)

瞬 (振り返ってしまう。)
   「そ…、それは、つまりどういう…!?」
   「そ、そそんな無理しなくていいんだよ!?」

邪武 「やっぱりダメかな?」
    「そんな半端な答えじゃ…」

瞬 「平気!! ぼ、僕、待ってるから!!」
   「ここで待ってる!! 行くのやめる!!」
   「それでも、いいんだよね!? ね!?」
(間髪入れずに、必死なカオで。)

邪武 「…ハッ、」「アハハハハ」
(突然笑い出す。)

(瞬1コマ。)

邪武 「ホント、お前って変わってるよな」

(瞬、肩をすくめてクスッと笑う。)

(白いカーテンの隙間から見える部屋の中。二人が屈託
無く談笑している。)

瞬 ―――大丈夫
       きっとすぐ好きになれる

   ―――すぐに好きになるよ…
(外に置きっぱなしで忘れられている瞬の荷物。)

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