(夜の城戸邸。)

(瞬の部屋。床に座ってTVを観ていた邪武と、そのすぐ隣
りでクッションを片手に眠りこけているパジャマ姿の瞬。)

(テレビの画面。洋画のエンド・タイトル。)

ピッ (邪武の手がリモコンでチャンネルを変える。)

(テレビの画面。たまたまやっていたニュース番組。)
キャスター 「…未明にかけて、首都アルジェから
        約200キロの農村地区を次々と襲い、」
        「住民数百人を殺害…」

(邪武1コマ。)

(民家の焼け跡の映像。)
キャスター 「アルジェリアにおけるこのような
        無差別テロによる死亡者の数は
        この十年間でおよそ…」

ピッ (テレビ。消される。)

(邪武1コマ。)

(ふと瞬に目をやる邪武。)

(眠っている瞬。天使の寝顔。)
瞬 「す―――」

邪武 「…ったく、」「しょうがねえ奴だな」

(邪武、瞬を抱きかかえてちゃんとベッドに寝かせて、)

(ふざけて瞬の額にキスしようとそっと身を屈めるが、)

(途中でやめてしまい、)

(顔を上げて、部屋を出て行く。)

(出入り口の所で明かりを消す邪武。)

(音を立てずに扉が閉められる。)


(冬の星空。)

(城戸邸周辺の、暗い道を歩いている邪武。)

ピッ (自動販売機のボタンを押す邪武の手。)

ガシャン (取りだし口に落ちてきた缶コーヒー。)

(夜の公園の絵に台詞のみ。)
? 「もォ、そこ通してよっ!」

(かがんで缶コーヒーを取りながら声のした方を向く邪武。)

(公園の前で三人の若者に取り囲まれてからまれている、
露出度の高い夏服を着たブロンドの美少女。)

(邪武1コマ。)

若者A 「イイじゃん、ちょっとだけ付き合ってよ」

ジュネ 「あんたたち、いい加減にしないと…」

邪武 (横を素通りしながら、しれっと。)
    「しつこい男は嫌われるぜ?」

若者B 「んだとテメェ」
(邪武の胸座を掴んで、)

ビュッ (殴りかかる。が、拳が邪武の身体をすり抜ける。)

若者B 「…!?」「コ、コイツ、今…透けて…」

邪武 「よせよ、当ったら痛いだろ」

若者B (もう一度殴りかかる。)

ガッ (邪武、缶コーヒーを持っていない方の手の平で受
け止める。)
邪武 「おたくらの手が。」

若者B 「うわあああっ」 (本当に手の方が痛い。)
若者C 「な、何だコイツ…!?」

こつぜん (男のコたち、遠くに走り去っていく。)
邪武 「…。」

(ジュネ、じっと邪武の顔を見つめる。)

(1コマ、シアワセそうに眠っている瞬。)

(城戸邸。)

(話をしながら歩いて来る邪武とジュネ。)


邪武 「なァんだ、じゃあオレが出るこた
     なかったんじゃねえか」

ジュネ 「そうでもないよ」

邪武 「…?」

(朝。)

瞬 「ふわぁ」 (目覚める。)

   「…あれ!?」
   「やだなぁ、また途中で寝ちゃったんだ僕」
   「最後どうなったのか邪武にきかなきゃ」

(瞬、窓のカーテンを開けて、)

(開けた窓から一寸身を乗り出して空を見上げる。)

(少し曇った空。)

(隣りの部屋から声が聞こえてくる。声の方を向く瞬。)
? 「あははは、それって体内時計ってヤツよね」

瞬 「…!?」
   ―――こ、この声…

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