コンコンコン (邪武の部屋のドアをノックする瞬。)

ガチャ (ジュネがドアを開けて出てくる。)

(1コマ、大きな絵で、対面する瞬とジュネ。)

瞬 「ジュ…ジュネさん」

ジュネ 「おはよう瞬」「久しぶりね」
     「あら、何よそのカオ? 
     驚かそうとは思ったけど、それじゃ
     まるで幽霊にでも会ったみたい」

瞬 「ど、どうして…」

(部屋の奥の方のカウンターでコーヒーをカップに注いで
いる邪武。)

瞬 「だって…」
   ―――どうしてジュネさんが邪武と…

ジュネ 「予定がズレちゃって、着いたの夜中だったの」
     「偶然彼に遭ったんだけど、
      妙に気が合っちゃって」
     「朝まで話し込んじゃった」

瞬 「…そ、そう」

ジュネ 「瞬クンの、恥ずかしーいお話百選!」

(瞬、赤面してバッと顔を上げる。)

ジュネ 「いやだ、冗談よ」

(さっさと部屋を出ていきながら、邪武に。)
ジュネ 「じゃね、どうもありがとう」

(コーヒーを飲みながら黙って手だけ上げる邪武。)

瞬 (一歩中に入って。)
   「おはよう邪武」「き、今日は、行かないの? 海…」

邪武 「ああ、一日くらいサボったって」
    「つもる話もあるだろ」

瞬 「う、うん…」

パタン (ドアを閉める。)

(瞬の部屋の中。)

ジュネ (出入り口の壁にもたれ掛かって。)
     「…素敵ね、彼♪」

(瞬1コマ。)

瞬 「そ、そう?」

ジュネ 「ええ、とってもチャーミングだわ」
     「仲が良いんですってね、瞬」
     「親友だって、言ってたわよ」

瞬 「親友……」

ジュネ 「あら、ちがうの?」

瞬 「………」

ジュネ 「?」

瞬 「…ジュ、ジュネさん……何だか」
   「何だか、前とちがう気がする…」

ジュネ 「当然でしょう、仮面をしていないんですもの」
     「スカート履いたし、ルージュも塗ったし、
     言葉遣いも改めたの」
     「私だって捨てたものじゃないでしょ」

     「それに…、」
     「変わったのは、私だけじゃない」

瞬 「エッ?」

ジュネ 「じゃあ、また後でね瞬」
     「この間の客間借りてるから」
     「実は沙織さんはご存知なのよ
      今はお仕事でヨーロッパですってね
      お会い出来なくて残念だわ」

(部屋を出ていきながら、振り返り。)
ジュネ 「少し休んでから、また話しましょ」
     「そうね、三時頃庭の噴水の前で
     待ってるわ」

瞬 「うん…」
(ジュネ、部屋を出て行く。)

(そのまま呆っと立っている瞬。)

(洗面台の鏡の前で自分の顔を見ている瞬。)

(浮かない表情の瞬。無意識に髪の毛を摘まんで捻じっ
たり引っ張ったりしている手。)

(ストレートのさらさらロング・ヘアとはかけ離れている、瞬
の髪。)

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