(夕方。)

(瞬の部屋のドアの横に、壁にもたれて立っている邪武。)

(廊下の奥から歩いて来る人影。)

(邪武1コマ。)

(歩いて来たのはジュネ。)
邪武 「ジュネ」

ジュネ 「何してるんだい、こんなとこで」
邪武 「な、なにって…」

ジュネ 「待ってるだけなの?」
     「追いかけないの?」

邪武 「…………」

ジュネ 「それにしても、驚いたね
     あんな滅茶苦茶な瞬、初めて見た」

邪武 「…一体、何がどうなってんだ?」
    「オレにはさっぱりワケが分からねえ」

ジュネ 「くすくすくす」 (小声で笑う。)

(邪武1コマ。)

ジュネ 「ハメられたのさ、私に」

邪武 「…は?」


サーン (砂浜に打ち寄せる波。)

(海岸。)

(砂の上に座り込んで膝を抱えている瞬。)

(空から雪がちらほら降ってくる。)

(空を見上げる瞬。もう泣いてはいない。)

ミューン (瞬の方へ近寄って来る、捨て猫らしい痩せて
汚れたキジトラ模様の仔猫。)

(瞬、仔猫に目を落とす。)

(瞬の足に擦り寄ってくる仔猫。)

瞬 (仔猫を抱き上げる。)
   「…あんまりだよね」「こんなのってないよね」
   ―――彼と彼女はお似合い

(小首をかしげる仔猫。)

瞬 ―――でもね…

(城戸邸の邪武。)
邪武 「ど、どういう事だそれは?」

ジュネ 「時々手紙が来るの」
     「その度にね、瞬が私の知らない瞬に
      なっていった」
     「嬉しかったけど、少し悲しかった」
     「ここに来てすぐに分かったよ
      あの子を変えた”そのひと”が誰なのか」

     「とどめを刺すなら今だと思ったの」

邪武 「とどめ…?」

ジュネ 「知ってるわよね、あの子の性格―――」
     「いつも誰かの為に自分を犠牲にする
      アンドロメダ…」
     「自分を犠牲にすることは
      確かに尊いことだけれど、」
     「あの子は肝心なことが分かっていないんだ」

     「その事で心を痛める人間もいるってこと」
     「そして、いずれは必ず彼自身も苦しむことに…」
     「そんな辛いこと他にあるかい」

(邪武1コマ。)

ジュネ 「でもその心配も今日でお終い」
     「他人の為に命さえ惜しげも無く
      投げ出していたような子が、
      明日になればこの私に宣戦布告に来るのよ」
     「自分の為だけに戦うの」

(邪武、無言のまま。)

ジュネ 「覚えておいて、あんた以外の他の誰にも
      出来なかったことよ」
     「彼の仲間も、兄弟も、変えられなかった」
     「あんたにはそれだけ価値があるんだよ」


(雪の降っている海岸。)

(座ったままの瞬。膝の上に仔猫。)

仔猫 「ミャーッ」

(瞬1コマ。)

(海岸沿いの道路を駆けて来る邪武。)
邪武 「しゅーーーん!」

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