邪武 「無駄だよ、オレはユニコーン」
「その類の技は効かないさ」
アグリボル 「…これはこれは、参りましたね」
「手荒なことはしたくありませんが…」
「しかしこれが私の使命―――」
(指の先から光。)
カッ (激しい稲妻が放たれて、邪武を空中で雁字搦めに
してしまう。)
アグリボル 「非礼をお許し願いたい」
邪武 「う…」
瞬 「邪…」
アグリボル 「では、神殿へお連れいたします」
(瞬1コマ。身体が動かず、何も出来ない。)
邪武 (怒鳴る。)
「いい加減にしろ!!」
瞬 「!?」
邪武 ―――ユニコーン・ブラスト
(見開きで。両手を使って技を繰り出す。背景に、一角獣
座バラ星雲の中から宇宙空間に駆け出してくる白いユニ
コーン。)
(ユニコーンがアグリボルに向かって突進するイメージ。)
バリーン (アグリボル、技を受けてガラス戸を突き破って部屋の外へ、)
ガシャッ (庭の地面の上に落ちる。50メートル位は吹っ
飛んでいる。)
(床に下りて片膝をついている邪武。雷光のようなものは
消えかかっている。)
(瞬1コマ。)
(邪武のアップ。じっと自分の両手を見ている。)
(邪武の両手。指先に血が滲み、痙攣している。黒いレザ
ーグローブがズタズタに裂けている。)
アグリボル 「う…うう…」
(ゆっくり起き上がる。一撃で鎧状のものがかなり破損し
てしまった。)
(自分の手を見続ける邪武。)
アグリボル 「こ、こんなことが……」
(邪武、我に返る。)
(瞬を立ち上がらせている邪武。起き上がっただけの体勢
でそれを眺めているアグリボル。)
(アグリボルの頭上から、声。)
? ―――何をしている、アグリボル
アグリボル 「!!」
(目の前に同じようないでたちの二人の青年が立っている。)
(猫。ハッと目を覚まし、)
ギャオーンッ (ひどく怯えて逃げ出していく。)
(外を見る瞬と邪武。)
バールシャミーン 「言った筈だ」
「必ずあのお方を神殿へ
お連れするようにと」
アグリボル 「し、しかし…もしも傷でも負わせる
ようなことになれば…」
バールシャミーン 「もうよい」
(もう片方の青年に向かって。)
バールシャミーン 「マラクベル」
(無言、全くの無表情でスッと片手をかざすマラクベル。)
(とっさに身構える瞬と邪武。)
(暴風のような力が二人に襲いかかる。)
ガシャンガシャンガシャーン (部屋中の物が飛ばされて
壁に叩き付けられて壊れる。)
ガン (グランド・ピアノも壁に当って壊れる。)
(なんとか持ち堪えて立っている二人。)
邪武 (強風に耐えているが、何事も無い。)
「…な、!?」「何のマネだ?」
(納得のいかない表情の邪武。その背後に瞬。陰になっ
ていて輪郭しかわからない。)
(不敵な表情のバールシャミーン。)
(邪武、振り返ってみる。)
邪武 「!!」 (台詞のみ。)
(瞬だけに技が効いている。左の脇腹の肉が大きく削げ
落ちて血と内臓が飛び散っている。凄惨な絵で。)
(瞬。声も出ない。後ろに倒れながら邪武の方に手を伸ば
す。)
(呆然とする邪武。目の前で何が起こったのか理解出来
ない。)
(瞬、胴体の左下の辺りが無くなってしまっている。)
(瞬のアップ。口から溢れる鮮血。)
(風がおさまっていく。)
トサ… (瞬の身体が仰向けに床の上にあっけなく倒れる。)
(邪武1コマ。)
邪武 (まだ呆然としている。)
「し…」「………瞬…?」
「瞬…」
(そのまま動かない瞬。血がドクドクと床に流れ続けてい
る。)
邪武 (ようやくハッとして叫ぶ。)
「瞬!!」
「瞬!!」「瞬―――!!」
バールシャミーン 「さあ、いかがなさいます?」
(邪武、瞬を抱き起こして、顔を上げる。瞬の血にまみれ
ている。憤りを通り越して、感情が凍り付いてしまったよう
な表情。)
バールシャミーン 「貴方様の御力をもってすれば、
その者の命を救うことなど容易い事」
「ただ願うだけでよいのです」
「しかしお急ぎになりませんと
手遅れになってしまいますかと」
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