邪武 「瞬…」

(瞬、死んでいるようにしか見えない。)

邪武 ―――瞬…
(催眠術にでもかかったようなカオでじっと瞬を見つめ続
けている。)

(部屋の中全景。瞬を抱きしめたまま動かない邪武。)

(それを眺めている三人の使者たち。)

(バールシャミーンの冷たい目のアップ。)

(邪武1コマ。)

邪武 ―――ダメだ…!
         思い出しては

ヒュー (瞬が微かに呼吸する。)

(邪武1コマ。)

フッ (ほくそえむバールシャミーン。)

邪武 (悲痛なのに穏やかな表情で。)
    「ごめん…」

    ―――ごめんな、瞬…

(見開きで。邪武の身体から凄まじい閃光。)
邪武 ―――約束、守れない…


(城戸邸正門を少し入った所を歩いている星矢。遠くで空
が光っているのを目にする。)

星矢 「な、なんだ!? あの光は…」

    ―――この小宇宙は…
         邪武…?
(邸の方へ走っていく。)

星矢 「!!」

(元の部屋付近。幅5メートル位の白い石の階段が青空
まで延びて見えなくなっている。下の方に一人だけでゆっ
くり上っているバールシャミーン。あとの者たちの姿はない。)

星矢 「か…階段…!?」
    「天に続いてる…」

(突然ハッとして邸の方に目をやる星矢。)

星矢 「瞬!!」
(割れたガラス戸の向こうに、仰向けで気を失っている瞬
が見える。)

(床の上に寝ている瞬。血も傷もみんな跡形無く消えてい
る。白い服に黄金の装飾品を付けた、エリシオンのニンフ
のような格好。)

星矢 (瞬を抱き起こす。)
    「瞬!!」「おい、瞬っ!!」

瞬 「…う」 (目を開ける。)

瞬 「ん…」
星矢 「どうしたんだよ!?」
    「あれは一体何なんだ!?」

瞬 「ん…何が……あったんだっけ…?」
   「…邪武?」
(周りを見渡すが邪武はいない。)

(突然ダッと駆け出す瞬。)
星矢 「あっ、おい瞬!?」

(瞬1コマ。)

(瞬の目線で、階段を上っていくバールシャミーンの後ろ
姿。)

瞬 「待って!!」 (階段を駆け上り出す。)

(無表情で振り返るバールシャミーン。)

星矢 「瞬!!」 (後を追ってくる。)

瞬 「邪武をどうしたの!?」
   「彼に何をしたの!?」

(面倒臭そうに瞬を見下ろすバールシャミーン。)

瞬 「答えて!!」
   「彼に会わせて下さい」
   「この上にいるんですね」

バールシャミーン 「残念だが、それは無理だ」
            「既にこの世にいない人間に
             会わせてやることなど」

星矢 「な、なんだって…!?」

瞬 「そんな筈無い」
   「だってこの小宇宙は…」

バールシャミーン 「黙れ」
            「今やあのお方は、お前などが
             気安く近寄れるような存在では
             ないのだ」

瞬 「ど…どういう…事?」

バールシャミーン 「覚醒されたのさ」

            ―――太陽神アポロン様として

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