(神殿内を歩いていく星矢と瞬。)

瞬 ―――なんて立派なお城…

(瞬の目線で、玉座の間。)

(見えない力によって扉が開かれる。)

(玉座の間、全景。椅子があるわけではなく、後方をぐるり
と半円形に円柱に囲まれた、10メートル程の階段状のも
のがあり、その上部に座っている人影がある。その下で
両脇にマラクベルとアグリボルが控えている。)

瞬 「邪武…!」

(大きなコマで、金髪の巻き毛にグリーンの眼をした邪武。
顔かたちはそのままだが完全に別人のようになっている。
白金色の鎧のいでたち。片手に竪琴を抱えている。)


(アポロン、星矢と瞬を見る。)

星矢 「…お、お前―――」

ザッ (瞬、その場に両膝をついて座り込んでしまう。)

瞬 「邪…武……」

(瞬の目線で、アポロンのアップ。)
瞬 ―――まさか…
       真っ黒な髪が…鳶色の眼が…
       まるで黄金を櫛で裂いたような
       ゴールド・ブロンド…
       エメラルド色の瞳…

(1コマ、インサート。海岸で振り返って瞬を呼ぶ邪武。)
邪武 ―――瞬!

瞬 「まさか…」「こんなこと……」

アポロン 「瞬」

(瞬。一歩後ろに星矢。)

瞬 「わ…わかるの?」「僕が…わかるんだね?」

アポロン 「覚えているとも…」
       「私は何も変わってはいない」
       「君らは私の大切な友人だ」

星矢 「ち…ちがう…」「まるで別人じゃないか!!」
    「オレたちの知ってる邪武はどうしたんだ!?」

瞬 「……いやだ」

(4〜5メートル前に進み出て叫ぶ。)
瞬 「返して!!」「元に戻して!!」
   「邪武を元に戻して!!」

星矢 「瞬…」

(黙って瞬の好きにさせているバールシャミーン。)

アポロン 「―――綺麗な眼だ」

(瞬、ビクッとなって静まる。)

アポロン 「君にはわかるだろう」
       「今の私の姿こそが
        彼の真実であるということが」

瞬 「嘘だ……」

アポロン ――― 一粒の砂に世界を見、
           一輪の野の花に天国を見る
           手のひらに無限を
           一刻のうちに永遠をつかみとる

        「君の好きな詩だ」

(瞬、愕然とする。)

(そのまま黙ってしまう瞬。)

星矢 「な、何故だなんだ…!?」
    「そうやって目覚めたってからには、
     何か訳があるからなんだろう!?」

アポロン 「恐れることはない」
       「私はなにもポセイドンやハーデスの如き
        愚かな行ないに出るつもりはない」
       「地上の王として君臨するつもりなど
        毛頭無い」

       「ただ、全ての悲劇の元凶となったものを
        取り除きたいだけだ」

星矢 「元…凶?」「そ、それは一体…」

アポロン 「太陽の光がこの地上の生命にとって
       どれ程の影響力があるかは知っていよう」
       「そして光が音と同じように
       波動の側面を持っているということも」

       「天国の狂詩曲―――」
       「聖なる光によって、悪しき心を持つ人間
        楽園に暮らす資質の無い者たちは
        ことごとく死に絶える」
       「この世界に生きる他の一切を
        傷付ける事なく、
        人類がこれまで築いてきたものの一切を
        失うことなく」
       「地上には君らのように正しい心を持った者
        だけが残る」
       「かつての黄金時代さながらに」

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