(星矢。)
(瞬。)
(瞬の記憶の中の邪武。)
邪武 ―――何も出来なかった
オレには、何も…
アポロン 「地上から愚かな争いは消える」
「もはや神々が地上を制圧しようとする名目は
無くなる」
瞬 ―――邪武―――!!
アポロン 「これはアテナのためでもあるのだよ」
星矢 「そ…そんな…」
「悪人なら死んでもいいっていうのか!?」
「殺してもいいっていうのか!?」
「それじゃあポセイドンやハーデスと
何も変わらない!!」
「そんなのニセモノの天国だ!!」
(バールシャミーン1コマ。)
(流星拳を放つ星矢。)
星矢 ―――目を覚ませ邪武!!
カッ (力が全てまともに星矢自身にはね返ってくる。)
(跳ね飛ぶ星矢。)
ダン (石畳の床の上に落ちる。)
フッ (鼻で笑うバールシャミーン。)
瞬 「星矢!!」
「星矢…」(駆けよって抱き起こす。)
(星矢、気絶してしまった。)
瞬 (アポロンを見上げて。)
「やめて…」「お願い元に戻って邪武…」
アポロン 「地上を守ることは出来ても…」
「人間を救うことは
誰にも出来はしなかった」
瞬 「邪武…」
「どこで決めるの?」
「悪い人と善い人をどう分けるの?」
「生まれながらに悪い心だけの人なんていないし、
完璧な善人もいない」
「僕はちっとも”いい人”なんかじゃないよ」
「もういいんだ」
邪武 ―――誰かを傷付けたり傷付けられたり
それは永久に終わらねえよ
瞬 「僕はそれでもここにいるって決めたんだ」
「君の傍にいるって決めたんだ」
(アポロン1コマ。)
瞬 「君のそばに―――」
(自分の発した言葉にハッとする。)
アポロン 「もうよい」「帰るが良い」
「そして私が降臨した事を
アテナに告げるのだ」
アポロン 「彼女は私に背くだろう」
瞬 ―――約束した…
アポロン 「些かの衝突はやむをえまい」
瞬 ―――待ってる
瞬 「…ぼ、僕は……」
―――どこにも行かないで待ってる
「僕はここにいる」
(アポロン、全く無表情だった顔に微かな変化。)
(バールシャミーン1コマ。)
瞬 ―――たとえそれがアテナを…
みんなを裏切ることになっても
―――世界中の全てのひとを
敵に回すことになっても
―――それでも僕は…
「君のそばにいる」
「ずっとそばにいる」
(アポロン1コマ。)
(瞬、気絶している星矢に目を落とす。)
瞬 ―――ごめんね
笑っていいよ、蔑んだって…
(瞬、涙を拭って、)
(もう一度、アポロンを仰ぎ見る。)
(そして臣下の一人であるかのように恭しい態度で片膝を
ついた姿勢で一礼する。)
瞬 ―――もう、どうしようもないんだ
―――僕は、恋してしまったから―――
(アポロン神殿外観。)
次頁へ