ドオオオオ… (神殿、轟音と共に砂煙を上げながら崩壊
していき、)

(数コマで、影も形も無い有り様に崩れ去る。)

バールシャミーン 「…な―――」

瞬 「ひっく…」
(すぐ傍に巨大な石が落下して来たり地面が裂けたりして
いるにもかかわらず、その場に座り込んで子供のように泣
いている瞬。完全に周りのことはどうでもよくなっている。)

(庭園部分も隆起したり陥没したりして危険な状況に。)

(砂煙の中に、ぼんやりと見える人影。)

ザ… (砂煙の中から一歩踏み出す、黒いロングブーツの
足。)

(バールシャミーン1コマ。)

(泣きつづける瞬。)

? 「お前のその泣き虫は」
   「もう一生治りそうにねえなァ」

(瞬1コマ。)

(顔を上げる瞬。)

(砂煙の中から現れる、黒髪の邪武。全身とアップ。頭か
ら血を流し、身体中かすり傷だらけだがしっかり立ってい
る。鎧状のものは脱ぎ捨てて元の格好に戻っている。)

瞬 「……邪」

(邪武のアップ。澄んだ真っ直ぐな表情。)

(崩壊する庭園全景。バールシャミーンと対峙する邪武。)

邪武 (優しく、敵意は無い。)
    「元居たところへ帰りな
     バールなんとかさん」
    「あとの二人は先に行ったぜ」

バールシャミーン 「な…」「何故だ……」
            「こ…こんなことが…」

            「再び眠りにつかれたというのか!?」
            「たかがこんな人間一人の為に!?」

(崩れ去っていくアポロンの領域。)

邪武 「オレはオレなんだよ…」
    「他の誰かになってやるつもりはねえ」
    「こんなヤツだけど…」

    「ホントにどうしようもねえ奴だけど」
    「だけど…」

(瞬のアップに台詞のみ。)
邪武 ―――結構、好きなんだ。


邪武 「この世界は天国ではないけれど」
    「オレはここで生きていく」

(バールシャミーン1コマ。)

(邪武1コマ。)

(邪武を見据えるバールシャミーンの眼。)

(邪武のアップ。口元に微かな笑み。自信と静かな強さを
湛えたまなざし。)

バールシャミーン 「御意―――」
(その場にひざまずいて、)

(立ち上がって背を向け、神殿があった方向、砂煙の中へ
消えていく。)

(座り込んだままそれを見ている瞬。)

(瞬のすぐ傍まで歩いて来る邪武。)

(瞬1コマ。)

(瞬の目線で、差し伸べられた邪武の右手。黒いレザーグ
ローブの残骸が残っている。)

(インサート。白いユニコーンが瞬の前にやって来る。)

ユニコーン ―――さあ、立ちな

(瞬、差し出された邪武の手にそっと手を重ねる。)

(瞬が立ち上がるというよりも、、フワッと引っ張り起こされ
て、)

(その勢いで邪武がギュッと抱きしめる。)

邪武 「……約束、だもんな」

(瞬、まだ呆然としているが、)

(やっと何が起きたのか理解する。)

(うっすらと微笑みを浮かべながら、泣き疲れて眠るように
邪武の腕の中で力が抜けていく瞬。)

(崩壊を続けている場所で、そのまま抱き合っている二人
のシルエット。)

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