(聖域。)

(古代の建造物の残骸のような場所に座って話をしてい
るアイオロスとサガ。)

アイオロス 「一見したところでは、そんな感じは
         少しも受けないのだが…」

サガ 「ああ、しかし隠しているだけなのだろう」
    「あの子がここに来るまでの境遇ときたら」
    「考えただけでぞっとする…」

アイオロス 「あんなに明るい天真爛漫な子が…」

サガ 「わからないよ…」
    「何故、あんな風に笑っていられるのだろう?」

(二人の目の前を通りかかる、幼いミロとカミュ。)

アイオロス 「あ、カミュ」
        「アフロディーテ…」
        「アフロディーテを知らないか?」

カミュ 「さあ? 僕たち見てませんけど」
     「でも多分下におりてると思う」

サガ 「そうか、ありがとう」
(ミロとカミュ、また歩いていく。)

ミロ (カミュに向かって、ボソッと。)
   「アフロディーテか、オレ苦手だなアイツ」

(いきなりアイオロスが二人の前に立ち塞がる。)
ミロ 「!?」

アイオロス 「ど、どうして…そう思うんだねミロ!?」

ミロ 「ええっ!?」「だ、だって…」
    「だってアイツ、オレのことスコーピオンて
    呼ぶんだもん!」

アイオロス 「…は?」
サガ 「そ、それが……何か…?」


(広大な草原。)

(遠くに、一人でぽつんと花を摘んでいるアフロディーテ。)

(アフロディーテの方に歩いて来る、サガたち。)
アイオロス 「アフロディーテ!」

アフロディーテ (立ち上がって振り返り、可憐な笑顔で。)
          「なあに?」「サジタリアス?」

(一瞬ショックを受けてしまったらしいアイオロス。)

(隣りで呆れたカオをするミロ。)
ミロ 「ほらな。」


(結局、アフロディーテを取り囲んで老師を除いた黄金聖
闘士10人が集まってしまった。全員聖衣姿でかなり仰々
しい光景。)

(困惑気味のアフロディーテ。)

アイオロス 「アフロディーテ、私のことは出来れば
        アイオロスと名前で呼んでくれないかな?」
        「それに、皆のことも…」

アフロディーテ 「ご…ごめんなさい」

アイオロス 「い、いや…なにも謝ることはないんだよ」
        「ただ…名前で…呼んで欲しいだけなんだ」

アフロディーテ 「……………」

サガ 「何も気兼ねする必要など無いのだよ」
    「ここにいるのはみんな君の仲間なのだから」
    「これからずっと一緒に女神を守っていくんだ」
    「だから、皆と友達になって欲しいんだ」

(生まれて初めて耳にする言葉を覚える時の様に。)
アフロディーテ 「……仲間」

(アフロディーテの目線で、幼い黄金聖闘士たち。)

(少し開放的な表情になるアフロディーテ。)

(青空、草原、石の宮殿の絵に台詞のみ。)
アフロディーテ 「ムウ」「アルデバラン」「サガ」
          「ルチアーノ」

(明るい表情で一人一人の名前を呼んでいく。)
アフロディーテ 「アイオリア」「シャカ」

(聖衣姿のまま草原で遊ぶ子供ら。)
アフロディーテ 「ミロ…」「アイオロス…」

(超次元の絵に台詞。)
アフロディーテ 「シュラ…」

(一面真っ黒なコマに台詞。)
アフロディーテ 「カミュ…」

(真っ暗闇の中に白いバラの花が一輪だけぼうっと現れる。)

(暗闇の中で俯いているアフロディーテ。肩から上くらいが
見えているだけ。)

アフロディーテ ―――あれから、
               一体どうなったのだろう…?
               壁を砕いて…
               ああ、皆はどうしたろう

          ―――私は再び
               地獄の責め苦に
               あっているらしいが―――
(闇の中に浮かび上がるアフロディーテの全身。白い布を
纏っただけのような簡単な服装で、石の十字架に磔にさ
れている。根元に巨大な白バラの樹。十字架に絡み付い
ている。有刺鉄線のような無数の細い蔓状の枝がアフロ
ディーテの全身を取り巻き、身体中にできた傷から血が滲
み出ている。)

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