キラッ (青く澄んだ空に、星のような一点の光。)
ドーン (空から何か降ってきて、古代ギリシア風の石の
建造物の上に落ち、石の屋根を貫く。)
シュウウウウ… (割れた石畳の上に倒れ伏している黄金
聖闘士たち。雷光のような光が全員の身体を包んでいる。
それぞれ、カノンくらいの軽装、あるいは初登場時のアイ
オリアくらいのプロテクターのついた格好。戦いの傷跡な
どは一切無い。)
アイオリア 「…くっ」
(全員ゆっくり起き上がる。身体中に痛み。)
ムウ 「う…うう…」
ミロ (全身を包んでいた光は次第に消えていく。)
「な…何だ……?」
アルデバラン 「一体…どうなったんだ?」
「オレたちは…?」
童虎 「嘆きの壁を破壊する際の衝撃に呑まれて
魂さえも消滅するかと思っていたが…」
(後ろで、なにやら訝しげなカオで自分の手や腕を眺めて
いるデスマスク。)
ボカッ (デスマスクがたまたま隣りにいたシュラをいきな
り殴る。)
シュラ 「…なっ!?」
「何のマネだデスマスク!?」
デスマスク 「痛かったか?」
シュラ (デスマスクの胸座をつかんで。)
「当たり前の事を…」
アイオロス 「コラ、よさないか」
シュラ 「…待てよ、そう言われてみれば」
「この感覚は…」
「身体が…ある……」
カミュ 「そ、そうだこの感じはまるで…」
サガ 「同じだ…」「命を、与えられている時と…」
デスマスク 「………生きてる。」
ムウ 「そんなバカな…」
「それでは、再び生きた生身の身体を持って
甦ったとでもいうのですか…?」
「12人全員が……」
アイオリア 「ち…ちょっと待て、」
「足りない…」
「11人しかいないぞ!?」
シャカ 「………ア」
シュラ 「アフロディーテ…!?」
(みんなで一瞬それを確かめる。)
アイオリア ―――アフロディーテが
いない―――
(みんな黙ってしばらく呆然とする。)
(石の建造物の外。周りにはエリシオンそのものの花園が
広がっている。)
(建物の中に一人残って立っているムウ。外からアイオリ
アが戻ってくる。)
ムウ 「何かわかりましたか?」
アイオリア 「いや、花園が続いているばかりで
オレたち以外の人間は一人もいない」
「ここは…一体どこなんだ……?」
ムウ 「そうですか…」
アイオリア 「お前の方はどうなんだ、ムウ?」
ムウ 「私もここで彼の居場所をつきとめようと
努力してはみたのですが…」
アイオリア 「やはり無理なのか」
「お前の力をもってしても…」
「もう前のように超感覚的知覚を用いる事は
出来なくなったということか」
ムウ 「ええ、それはつまり…」
アイオリア 「…?」
ムウ (足元の石の破片を拾い上げる。)
「こういう事です―――」
(手刀の構えをつくり、)
(石の上にフッと振り下ろす。)
ガッ (ムウの手の方から血が飛び散る。)
アイオリア 「な…っ!?」
ムウ 「見ての通り…」
「これでは聖域の雑兵の方が
よっぽどマシでしょうね」
(アイオリア、驚愕の表情。)
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