(両目にいっぱい涙をためて、光の中の映像に見入るアフ
ロディーテ。)
アフロディーテ 「わ、わからない…」
「何故……」
「そもそも、放っておいても
死んでいた筈の彼らを甦らせて…
あんな目に遭わせて…
それに一体何の意味がある!?」
ペルセポネ 「血の通った生きた肉体を得ることが
どれ程困難なことなのか、知ってる?」
「死後の苦しみなんかより、
人間がただ生きていることの方が、
よっぽど苦しいことだわ」
「よくご覧なさいね」
「あなた一人の為に用意した茶番劇よ」
アフロディーテ 「…く、苦痛を……」
「苦痛を味わわせるために…」
「私にそれを見せる
ただそれだけのために…」
「それだけのために…」
「それだけのために彼らは…」
ペルセポネ 「そう、それよ」
「私はその顔が見たかったの」
「その顔が見たかったのよ!」
(空の高みに静止しているヒポグリフ。鷲の翼と馬の尻尾
の装飾のある甲冑の美少年。)
(地面に倒れ伏しているムウとアルデバラン。)
ヒポグリフ 「信じらんない」
「こんなのが元はゴールドの聖闘士だなんて」
「女王様はああおっしゃったケド、
つまんないからもうお遊びはお終い」
(急に表情が険悪になる。)
ヒポグリフ ―――地中深く
埋め殺してあげるよ
(下へ向けて拳を放つ。)
アルデバラン 「ぐっ」
(拳圧で背中から地面に押し付けられる。)
(同様のムウ。口からバッと血を吐く。)
(うつ伏せに倒れたまま、身体が半分以上地面にめり込
んでしまっている二人。)
(拳を放ち続けるヒポグリフ。)
ヒポグリフ 「ハハハハハハ」
アフロディーテ 「ムウ…」
「アルデバラン…」
(岩山。)
(歩いてくるカミュ。完全に息が切れている。)
カミュ 「ハァ」「ハァ」「ハァ…」
――― 一体、私の身体はどうなって
しまったのだろう?
カミュ (額の汗を拭いながら、空を見上げる。)
―――しかも、何故…
こんなに暑いんだ……
ドーン (突然岩の裂け目から大量の溶岩が吹き上がる。)
カミュ 「…!?」
(吹きあがる溶岩の中に立っている人間の影が見える。)
ガッ (溶岩の中から飛び出して、岩場に着地した甲冑の
足。)
(大きな蜥蜴の尻尾、鋭い爪の装飾のある甲冑の美青年。)
(サラマンダーのアップ。無表情で、爬虫類のような眼。)
カミュ 「!!」
(周囲の何箇所もから溶岩が吹き出し、)
(カミュのすぐ後ろから天高く吹き上げた溶岩が津波のよ
うにふりかかってくる。)
カミュ 「くっ」
(とっさに両手を突き出して身構える。)
カミュ ―――なに!?
と、凍気が…
(カミュのアップ。絶体絶命の表情。ふりかかってくる溶岩
の陰が出来ている。)
(滝のように空中から地面に流れ落ちていく溶岩によって
画面が遮られる。その向こうに、シルエットのみ見えてい
るカミュ。)
カミュ 「うわああああ!!」
アフロディーテ 「カミュ―――!!」
(光の中に映っている映像。岩場に溶岩が流れている光
景だけで、カミュの姿は無い。)
(呆然とするアフロディーテ。)
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